大学の夏休みと節電
大学の職員としてこの夏の節電にどう取り組むか、早めに決めなければならない。
連休直前の4月18日付で東洋大学が夏休みの延長とそれに伴う授業短縮措置を発表して、ニュースで話題になった。また、東京工業大学や千葉大学でも夏休み前の授業期間を短縮する措置を計画しているようだし、東京農工大ではサマータイム(1時間前倒し)を行うそうだ。
さて、自分の大学ではどうするのがいいのか?最終目標はピーク時の消費量削減だろう。ピーク時には、一日の中のピーク時つまり日中のもっとも冷房電力を要する時間、たとえば12時~15時とか11時~16時とかを外すこと、週の中のピーク時つまり平日は土日に比べて消費量が多いので外すこと、長期的なピーク(8~9月の最暑期間)を外すこと、といろいろ考えられる。
他大学で言われている授業の夏期休業は、理系大学ではどれだけの効果が望めるか、よくわからない。理系の研究活動が夏休み中も行われる限りは、そこで必要な電力が使われるし、「人がいる」だけのために必要な電力、たとえば照明や空調、エレベータ等の電力や、事務棟や図書館などの共通施設の電力なども結構大きかろう。1人でも人がいれば、照明も冷房もある程度必要となる。だから、決められた期間はキャンパス全体を立ち入り禁止にして、電力を大本から切ってしまうべきである。計画停電で切れた時のことを考えれば、何のことがあろうか?
小生の勤める大学では生物系研究のための動物舎や細菌、また試薬等の保存のため冷暖房が必要になるが、これらも「停電したと思って」上手に逃れる工夫をする必要がある。多少の手間は発生するが、たとえば他研究所・他地方へ疎開するなどの事前の手当ても十分に考えられる。それによって、8~9月のたとえば2週間なり3週間なりを完全シャットアウト状態にするのである。工場の夏期休業はすべてのラインを停止しほとんどの電力をオフにする。それだけの工夫を、大学もするべきだろう。たとえば世界的な研究競争の都合で研究の休業ができないなら、それなりの研究施設だけを建物単位で稼動する。但し、研究者は何やかやと言っては自分だけ電気を入れるから、キャンパスごと、せめて建物ごと、電力を切ってしまわなければ必ず抜け駆けする奴が出る。
研究活動の週末へのシフトも、1つの可能性ではある。ただ、この夏に限っては週末といえども週末へシフトする工場も多く稼動するし、暑ければ家庭での冷房需要も大きいだろうから、インパクトは小さいのではないか。週末シフトするよりは、2~3週間の全面休業に伴って家族全体で関西なり北海道なりに疎開するほうが、よほど需給緩和に役立つだろう。
日中のオフピークのための方策としては、工場での方法と同様、夜間にシフトすることが考えられる。夏に授業がなく昼間の仕事がないと仮定して、研究のための出勤時間を夜中にし、たとえば夜11時から朝7時までの勤務とする。日中の電力ピークを外せる上に、夜間になれば気温が下がって冷房量も減るだろう。多分照明に必要な電力を穴埋めしてさらにお釣りがくるに違いない。これの問題はまずは労働条件で、組合と勤務時間について協定を結び直す必要があるだろう。また、外部との接触(資材の受入れなどそれなりに存在するだろう)も事前に調整しておく必要がある。しかし不可能ではあるまい。たとえば8月一杯を全面休業、9月を夜間操業、などとすることも可能だろう。
どの策を用いるにしても、8~9月に予定されている日中の行事(夏期講座の類や高校生向けの行事などを含め)は、一切中止することになる。また、例年行っている教室の貸出しや運動場の貸出しも中止する必要があるだろう。
大学人は、自由と個人を尊重するため、産業界での工場の夏期休業や夜間操業のような「軍隊式」のコントロールを好まない。しかし、ひと夏ぐらいなら、しかもそれで日本全体が幸せになれるなら、それで乗り切るのも悪くなかろうと思うのだが。