「謎解きアリス」

最近あちこちの書評で見かけるPHP新書「謎解き『アリス物語』」(amazonへのリンク)を読んでみた。

アリスの成立過程、著者のルイス・キャロル、更には当時の英国の文化・週間・状況などを詳しく考察した、なかなかの力作だと思う。著者(沖田知子, 稲木昭子 )のお2人は、アリスの研究の長い経歴を持っておられるようで、専門研究書等も出版されている。

もともと童話・ファンタジーのイメージで捉えられる(たとえばディズニー)のと、我々はどうしても翻訳で読むので、お話の筋のみを追いかけてしまい、「わけのわからない話」「不条理」といったイメージすら伴うのだが、実は、アリスを相手にお話をするという設定でありながら実に言葉の遊び・論理の遊びをし、世相を皮肉った警句を散りばめてある、というのが言い分で、その通りである。

昔から(’70~’80年代の)コンピュータ科学の研究者は、アリスの一節を自分の著書の各章の扉ページに入れたり、研究のサンプルとして利用したりすることが、広く行われてきた。それは、論理の遊びや言葉の遊びが研究者の心に触れるものであったり研究内容を想起させるものであったりするからであり、また警句は研究者の学界への警句をほのめかしたりするからである。要は、知的な遊びを行っていたのである。 世の中が多くコンピュータの実用研究に移ってしまった現在、あのようなセンスはもはや無用になってしまったのだろうか。

もう1冊、昔に読んで面白かったアリスの本に、「ルイスキャロルの意味論」(アマゾンへのリンク)がある。著者の宗宮喜代子氏は言語学者ということで、言語学・意味論から見たつっこみが面白い。ちなみに、構成は古典論理学者としてのキャロル・意味論者としてのキャロル・語用論者としてのキャロルの3本立てになっている。

ルイスキャロルを偏屈扱いする人がいるが、当らない。どちらかというと、いろいろと頭をひねって見せては「どうだ!!」と言っているのであって、かなり人恋しい目立ちたがりなのではないだろうか。それをアリスにしか語れなかったところが、引きこもりオタク、なのである。

読書

Posted by yamanouc